東源寺という榧の木で名高い寺への近道の棒杭のある所から街道を外れて入った。

 これは、志賀直哉の「十一月三日午後の事」に出てくる一節である。手賀沼畔の志賀直哉邸から常磐線の踏切を渡って、東源寺の近くへ鴨を買いに行ったときのことを書いたものである。

 その榧の木が今も本堂の前に堂々とした姿を見せている。これは相馬八十八ヵ所を開基した光音禅師お手植えの榧と伝えるもので、樹齢凡そ260年の巨木。千葉県の天然記念物に指定されている。
 榧はイチイ科の常緑喬木で、材質の固いところから、仏像や碁盤などに使われている。

 今日の散歩はその東源寺まで往復した。すっかり刈り入れの終わった北新田を、利根川の堤防の上に顔を出す筑波山を眺めながらのんびりと歩いた。静かな境内でお昼でもと思い、おにぎりを用意して行ったのだが、今日はお彼岸。お墓参りの人が多く、そんな雰囲気ではないのでしばらく我慢。結局自宅近くのファミレスまで戻り、一杯やることになってしまった。